ВОЕННО-ИСТОРИЧЕСКИЙ КЛУБ
『Красный Самурай』
戦史研究クラブ『赤侍』
38年度版労農赤軍教練教本における各個教練
昨今の情勢下でこれをご覧になってくださる皆様は前代未聞の事態に際し、多大なるご苦労をされていることと思います。そこでこのサイトをご覧になってくださいます皆様に対して何か出来ることはないかとクラブ会員同士で相談した結果、2018年に当クラブが出版いたしました『労農赤軍歩兵科兵士のてびき』に掲載した38年度版労農赤軍教練教本(СТРОЕВОЙ УСТАВ ПЕХОТЫ РККА)における各個教練部分を紹介しようとの結論に至りました。各個教練はご自宅やお庭にて鍛錬いただける内容となっておりますので、周囲の環境に十分お気をつけ頂きましてご活用くださいませ。なお、冊子をご購入いただきました皆様におかれましては何卒ご理解いただけましたら幸いです。
なお、号令については原文ママにしてあります。号令にはСМИРНО(気を付け)のように動令のみのものと、予令と動令とが組み合わさっているものがあります。予令にて受令者はいずれかの号令の動作を行うべきかを理解し、動令にて号令の動作を行います。例えば号令Нале-ВО(左向け左)の場合をみてみましょう。下に挙げた映画『Рядовой Александр Матросов』17分47秒のシーンにあるように発令者は「ナレーーヴォ!」と号令をかけます。予令は「ナレー」でこれを聞いた受令者は何の号令なのかを今自分の置かれている状況等を鑑みて判断します。次に動令「ヴォ」にて左向け左の動作を完了します。その後のシーン、На пле-ЧО(担え銃)では予令の「ナ プレ」、予令と動令間「ーー」で担え銃の操法を行い、動令「チョ」にて担え銃を完了します。ページ下部にいくつか30年代~40年代の赤軍を描いたソ連映画のリンクを紹介しておりますので、そちらも合わせてご参考にされてください。また発音については当時の発音方法や部隊による差異について不明な点があるためカタカナや発音記号での表記は避けております。
2020年4月21日
戦史研究クラブ『赤侍』代表
Александр Степанович Пирогoв
1. 一般規定
«部隊内における指揮官及び兵士の心得»
㉒.一般心得
A) 整列時には常に沈黙と注意を払う事。
B) 許可なく列を抜けない事。
C) 整列時はまっすぐ前を見、動いてはいけない。ただし、緊迫した状況下でない場合前列との調整のために足を動かしても良い。
D) 常に指示された姿勢をとる事。
E) 武器について良く知識を涵養し、如何なる状況においても衝撃や汚染から守り、常に戦闘行動に備えて装備を行う事。
F) 如何なる時も軍事機密を守り誰にも話してはならない。また、機密の保護について忘れてはならない。
㉓.指揮官の心得
~編成前~
A) 部下の健康状態、武器、弾薬及び化学防護装備の確認をする事。
B) 部下の装備、被服がきちんと整備、補給され、正しく装備がなされているか確認する事。
~列内~
A) 規定の要件を適切に満たすために部下に例を示す事。
B) 部下による整列の正確な実施を監視する事。
㉔.兵士の心得
~編成前~
A) 被服、武器、弾薬、化学防護装備、携帯スコップが適切に整備されているか、使用可能か確認する事。
B) 正しく被服や装備が装着されているか確認する事。
~列内~
A) 整列位置に迅速に整列できるように、自分の整列位置を把握しておく事。
B) 指揮官からの命令や信号に気を配り、命令を受けた場合他人の邪魔をすることなく直ちに実行する事。
C) 大声で明瞭に命令や信号を復唱する事。(ただし、夜間においてはその限りではない)
~列外~
A) 部隊の宿営及び列外(市街やその他)においては常に服装を清潔にし、正しく着用する事。
B) 常に軍人的態度を保つ事(例:ポケットに手を入れたままにしてはいけない等)。
2.各個教練
~徒手各個教練~
㉕.号令«СТАНОВИСЬ»『集合せよ』、«СМИРНО»『気を付け』(著注:徒手基本姿勢)
所作:真っ直ぐ立ち、踵を揃える。
つま先は足の幅もしくは床尾の幅に開く事。
緊張せず真っ直ぐ立つ事。
手を下に下げ親指を太腿の中央に当て手のひらを軽く握る。
その後に肘を後ろに引く。前を真っ直ぐ見る事。
この動作においては胃を上に上げるような感覚で、肩を張り、背筋を伸ばす事。
強張らずに立ち次の動作に直ぐうつれるようにする事。
«СМИРНО»の号令がかかると、動いてはならない(図1 著注:徒手基本姿勢)
㉖.号令«ВОЛЬНО»『休め』
体の力を抜いてもよいが、その場から移動してはならない。
また、その後の号令に注意を払う事。
指揮官の許可がない限り煙草やおしゃべり、列を離れてはならない。
号令«ОПРАВИТЬСЯ»『装備や服装を整えよ』
この号令にて装備や被服を整える事(著注:整え方は『労農赤軍兵士のてびき』19ページを参照の事)
~停止間における方向転換~
㉗.停止時の方向転換の号令は以下の通り
«Напра-BО»『1/4右へ転回せよ(右向け右)』
«Полоборота напра-ВО»『1/8右へ転回せよ』
«Нале-ВО»『1/4左へ転回せよ(左向け左)』
«Полоборота нале-ВО»『1/8左へ転回せよ』
«Кру-ГОМ»『1/2左へ転回せよ(回れ左)』
«Направо»、«Полоборота направо»は右踵と左爪先で回転する。
«Налево»、«Полоборота налево»、«Кругом»は左踵と右爪先で回転する。
回転は2動作で行い、体の重心を崩さずに回転しその後足を揃える。
方向転換時は手を強張らせずに軽く伸ばし体に付けておく事。
㉘.号令«ЛОЖИСЬ»『伏せよ』
1/8回れ右を行い、右足を半歩前に出す、素早く左膝を地面につけ左肘と左手を地面につけて指示された方向に向いて伏せる事。(図5)
㉙.号令«ВСТАТЬ»『起きよ』
両爪先を地面に立て、両手を肩と同じ位置につき、上体を持ち上げ左足を一歩前に出し立ち上がり、右足を左足に揃える。
㉚.号令«СМИРНО»『気を付け』にて基本姿勢に素早く静かに戻る。“ВОЛЬНО”『休め』の姿勢にある時は号令により基本姿勢(著注:『気を付け』)をとる事。
㉛.停止間における敬礼について。
列外停止敬礼の場合受礼者の方向を向き“СМИРНО”『気を付け』の姿勢にて受礼者に頭を向け注目する。被帽の場合は手のひらを真っ直ぐに揃えて伸ばし、わずかに外側に向け、肘は肩の線上と同じ高さに上げて敬礼を行う(著注:指先は略帽の場合こめかみ部略帽下縁、制帽の場合制帽下縁前庇の右側に添える)(図2)。
~行進~
㉜.行進や駆け足の動作は左足から始める。
㉝.速歩には儀式速歩及び行軍速歩がある。
儀式速歩は儀式行進時や、行進間における敬礼や上官に接近する場合に行う。
行軍速歩は他のすべての場合に適応される。
㉞.号令«Шагом-МАРШ»『速歩行進始め』
この号令がかかる前に体を少し前にして号令に備える事。また、行進中は体の平衡に気を付けること。
行進には二種類あり、以下に示す。
A) 儀式速歩の場合、足と足首は前方に伸ばし前進する。毎歩強く足を踏み同時に体重を前方に移す。
両手を振り、滞る事無く行進を続ける事。手を前方に振る場合装備ベルトの位置まで上げる。後方には肩関節の動く限り後ろ振る事(右足を上げると左手を前に左足を上げると右手を前に)(図3)。
B) 行軍速歩の場合膝を曲げず、足先を伸ばさず、普段の歩行のように地面に足をついて前進する事。
㉟.儀式速歩や行軍速歩時の速さは1分間に120歩、歩幅は75~80cmで行進する事。山地や雪面、砂面、耕地においては歩度を短縮する。
急歩は1分間に135歩、歩幅は80~85cmで行進する事。
㊱.号令«На месте шагом-МАРШ»『足踏み始め』
(行進間においては«НА МЕСТЕ»『足踏みせよ』)
この号令にて足踏みを行う。足踏みは足を上げ、前進しない事。足踏みの速度は速歩と同じとする。
足踏みをしている最中は手も同時に動かす事。
足踏みは«ПРЯМО»『真っ直ぐに(著注:行進に戻せ)』の号令がかかるまで続ける。号令は左足が地面についている際にかかるので、号令後右足で足踏みをし、左足より速歩行進を始める事。
㊲.号令«Боец-СТОЙ»『行進(動作)を停止せよ』
(著注:号令後1,2のテンポで止まる、個人に対する命令)
この号令がかかると1歩前進し足を揃え停止する。
㊳.行進の速度を変更する号令は
«Шире-ШАГ»、«Короче-ШАГ»、«Чаще-ШАГ»、«Ре-ЖЕ»、«Пол-ШАГА»、«Полный-ШАГ»
『歩幅を伸ばせ』、『歩幅を縮めよ』、『歩幅を速めよ』、『歩幅を緩めよ』である。
㊴.号令«Бегом-МАРШ»『駆け足せよ』
駆け足は腕を太腿につけ前傾姿勢になり、手を腰の側に置き、左足より駆け足を開始する。足の動きに合わせて腕を振る。
駆け足は1分間に180歩のペースで、歩幅は少なくとも1mの幅で行う事。
駆け足は右足を一歩前に進め、左足から実行する事。
«Шагом-МАРШ»より«Бегом-МАРШ»を実行する場合は2歩前進し左足より駆け足を行う事。
㊵.長距離急行(急進)の場合は交互行進(駆け足及び速歩)を行う事。
~執銃各個教練~
㊹.執銃基本姿勢は徒手の場合と同じである。(㉕を参照)
㊺.立て銃の姿勢“у ноги”:床尾板を地面につけ、銃床を右足の側に置き、足先の線と銃床下面を揃える。銃を持つ手は自然に降ろし、親指で小銃を握りその他の指を添える。前腕は緊張しないようにする事(図4、著注:執銃基本姿勢)。
㊻.号令«ЛОЖИСЬ»『伏せよ』により㉘の項に示す姿勢をとり、小銃は射撃準備し保持する事。(図5)
号令«ВСТАТЬ»『起きよ』により㉙の項に示す要領により起立する。起き上がる際、銃に体重をかけてはいけない。
~小銃の操法~
㊼.号令『吊れ銃』«На ремень»の前に小銃に安全装置をかける事。
«На ремень»は«На ре-МЕНЬ»によって3動作で完了する事。
1動作目:
立て銃の位置より小銃を持つ右手を右足の中心線上に持ち上げる。この時小銃の銃口側の負い革止めを自分の肩の高さに合わせ る事(小銃は体より離さない)。左手は銃床縦溝部分を持つ事(図6)。
2動作目:
左手は小銃を保持し、右手を小銃より離し負い革の上端を親指とその他の指でつかむ(図7)。
3動作目:
右手で負い革を保持し素早く肩に負い革を掛ける。同時に左手は下げる。肩に負い革を掛けた後、右手は負い革を掴んだまま胸の位置まで下げる。同時に肘で小銃を後ろに押し体に密着させる(図8)。
㊽.吊れ銃より立て銃を行う場合、号令は«К но-ГЕ»である。この動作は3動作で完了する。
1動作目:
負い革を持つ右手を前に出す。負い革を前に出すと銃床が前に出てくるので、左手で銃床縦溝部分を掴む(図9)。
2動作目:
左手で小銃を保持しながら右肩より負い革を抜く、その後右手は銃口側負い革止めの銃床側を持つ。(図6)
3動作目:
素早く小銃を降ろし、静かに銃を地面につけ立て銃(図4)の姿勢をとる。
㊾.軽機関銃の«На ремень»と«К ноге»は小銃の動作に準じる事。
㊿.号令«ЗА СПИНУ»『負え銃』にて小銃に安全装置をかけ、負い革を伸ばす。
(着剣している場合には銃剣は取り外し、銃剣吊りに入れる)その後左肩に袈裟懸けに小銃を背負う。
«К ноге»『立て銃』にて立て銃の姿勢を取る。
必要に応じて以下の号令が下される。
«Штык-ПРИМКНУТЬ»『着剣せよ』
«Ремень-ПОДТЯНУТЬ»『負い革を締めよ』
«Курок-СНЯТЬ»『撃鉄を解け』
注意!:背嚢を背負っている場合は小銃を背負わないこと。
51.軽機関銃の«ЗА СПИНУ»『負え銃』は小銃の動作に準じる事。
52.号令«На пле-ЧО»『担え銃』にて立て銃から担え銃を行う。この動作は2動作で完了する事。
1動作目:
右手で小銃を保持しながら小銃の遊底を前面に向ける。左手は伸ばし太腿の前面で床尾板を掴む。この際親指は床尾板の前面に出す。小銃は左足の中心線に合わせ、左肩に対して垂直に保持する。小銃を保持している右肘は肩の位置まで上げる。(図10)
2動作目:
右手で軽く小銃を体に押し付け、同時に左手を上昇させ肩と鎖骨の間に弾倉部分を置く。同時に右手を下げる。左手首は肘よりわずかに下にし、体に密着させる。この際小銃が回転しないように左手はしっかり床尾板を保持する事。
担え銃を正確に保持させる為に
«Довернуть-ПРИ-КЛАД»『床尾を正せ』
«Приклад-В ПОЛЕ»『床尾を正面にせよ』
«Штык-ВЫШЕ»『銃剣を高くせよ』
«Штык-НИЖЕ»『銃剣を低くせよ』
等の号令が使われることがある。
53.担え銃より立て銃を行う場合3動作で完了する事。
1動作目:
床尾板を持つ左手を下に伸ばし、小銃を下に移動させる。同時に右手で小銃を保持する。
2動作目:
(図6)を参照。
3動作目:
左手を元の位置に戻し、小銃を下に降ろし立て銃の姿勢をとる。
注:着剣していない小銃及び軽機関銃を所持している状態において、号令«На плечо»『担え銃』を命令された場合『担え銃』は行わずに «На ремень»『吊れ銃』を行う事。
54.号令 «На руку»『構え銃』により行進中担え銃より構え銃を行う。
A) 行進を継続しつつ右足を1歩前進させる。左足が地面についた際に左手を小銃と共に下に降ろし同時に右手にて銃把を握る。
B) 右足にてさらに1歩前進し、左足を地面についた際に素早く右手を銃床と共に右脇腹につけ、左手を銃口側の負い革留め下部を握る。右肘を肩の線上に置き、銃剣を首の高さに保つ事(図12)。
55.構え銃の姿勢において行進中、担え銃を行う場合は
A) 行進を継続し右足にて1歩前進し左足が地面についた際に銃床を握る右手を回転させ小銃を体につける。左手にて小銃を押し上げ、床尾板を握り直す。
B) 右足を1歩前進させ左足が地面につく際に担え銃の姿勢をとる。この際右手は素早く下に降ろす。
56.構え銃は観兵式の行進にのみ行う事。
57.担え銃での行進時、止まれの号令にて1歩前進し停止した後足を揃え、立て銃の姿勢をとる事。
58.“у ноги”『立て銃の姿勢』の状態からの転回は小銃を垂直に3~4cm持ち上げ、小銃の銃口もしくは銃剣を肩の位置に合わせる。転回後足を揃え、立て銃の姿勢に戻る事。
59.立て銃の状態で移動する必要がある場合は小銃を3~4cm持ち上げ、体に密着させる事。
行軍時は小銃を手に持たず、両手を自由に動くようにしておく事。
駆け足時、小銃は右手を少し曲げた状態で保持し、銃口はわずかに前にする事。
密集体系で駆け足をする際には銃剣は外しておく事。
60.号令«ВОЛЬНО»『休め』時には体の力を抜いても良いが、小銃を保持している位置を変えない事。
61.行軍中の武器を持った状態での敬礼についての要点は以下の通り。
A) 『立て銃』『担え銃』『吊れ銃』の場合は儀式速歩を行い、受礼者の側へ頭を向け腕は動作を続ける事。
B) 『負え銃』の状態においては㊷の項に示されている通りに敬礼を行う事。
62.車両、荷車、馬上にて行進中の状態での敬礼については以下の通り。
A) 車上や荷車の上においては(運転手、馭者以外)受礼者へ頭を向け、敬礼を行う事。
B) 馬上においては姿勢を正し、受礼者の側へ頭を向け敬礼を行う事。
63.列外にて上官への報告、伝達の場合は儀式速歩にて接近し3歩前で停止し気を付けの姿勢を取り、最終の歩で敬礼、足を揃えると同時に手をおろし報告を行う。
報告終了後戻る事を許可された後、敬礼を行い敬礼したまま回れ左を行う。第1歩を踏み出すと同時に敬礼した手を下げて元の位置に戻る事。小銃を所持した状態で上官に接近する場合、担え銃を行い儀式速歩にて前進し立て銃の姿勢で報告、伝達を行う。戻る事を許可された後、担え銃にて回れ左をして元の位置に戻る事。列より上官に対する報告は休めの号令があるまで許可されない。
~匍匐~
67.匍匐は低姿勢匍匐もしくは高姿勢匍匐(四つん這い)にて行う。
低姿勢匍匐は移動の前に地面に伏せ、頭を上げず右手で小銃の負い革の上端を持つ。小銃は手首と前腕の外側に寝かせる事。
片足膝を折り可能な限りそれを前へ伸ばす。膝は外側に伸ばした際、同時に手も前へ伸ばす。手のひらに重心をかけ地面を曲げた反対側の足で蹴る。同時にその力で前進する。体が前進しない場合別の手足で動作を繰り返して、体を前進させる(図13)。
高姿勢匍匐では膝立ちになり、手首と肘に重心をかけ右手で小銃の負い革を持ち、低姿勢匍匐と同様に動く(図14)。 後退時は上記の動作を逆に行い後退するがその際は敵方に顔を向けながら行う事。匍匐前に移動すべき地点周囲に匍匐終了時に退避できる遮蔽物を見つけておく事。
~教練動画~
基本的な所作を紹介しております
~30年代40年代の赤軍を描いた映画~
30~40年代に作られた赤軍を描いたソ連映画をいくつか紹介いたします。号令や兵隊の所作についてのご参考にどうぞ